高血圧症について

高血圧とは

高血圧は最も患者数の多い生活習慣病と考えられており、実際日本では50歳以上の3〜4人に1人が患っていると言われています。では、高血圧とはどんな状態を言うのでしょうか。まず血圧とは血液が動脈に流れる際に血管の内側にかかる圧力のことを言います。血圧を示す数値は上と下と2つあります。上と言われる数値は「収縮期血圧」と言い、心臓が血液を送り出した時の大動脈の内圧のことで、この時血圧値は最大を示します。下と言われる数値は「拡張期血圧」と言い、心臓が拡張して酸素を運んで戻ってきた血液を心臓へ溜め込む際の動脈の内圧のことで、この時血圧値は最低を示します。高血圧とは、一般的に上と言われる「収縮期血圧」が140 mmHg 以上、下と言われる「拡張期血圧」が90mmHg以上と定義されています。ただし、高血圧症かどうかはひとりで判断せず、必ず医師に判定してもらいましょう。

高血圧症の症状

一般に高血圧症には自覚症状がありませんが、頭痛、めまい、耳鳴りなどを感じる時があり、高血圧症がかなり進んでくると、動悸・呼吸困難・胸痛・むくみなどみられます。しかし、こういった症状は血圧とは関係なしに現れることもあるため、なかなか高血圧症だという自覚につながりにくいものです。だからこそ症状があるなしに関わらず、定期的に検査する必要があるのです。高血圧を放置すると様々な臓器で合併症を引き起こします。高血圧状態が続くと血管壁が厚く固くなることから起こる動脈硬化が促進され、血管に弾力性が失われて血液の通り道が狭くなり、さらに血圧が上昇するとい悪循環が合症へと繋がります。
特に合併症は血管の多い臓器にほど起きやすく、下記のような病気があげられます。どの合併症も一度起きてしまうと長期治療が必要となり、今までの生活を送れなくなる可能性もあるため、高血圧症は合併症が起きる前に早めの治療が大切になってきます。

  • 【脳血管の病気】脳出血・脳梗塞
  • 【心臓の病気】狭心症・心筋梗塞
  • 【腎臓の病気】腎硬化症・腎不全

高血圧症の原因

高血圧には2タイプがあります。1つ目は「二次性高血圧」と言い、腎臓や心臓・血管異常など血圧を高くする明確な原因があり、その病気の治療を行えば血圧も正常に戻るタイプです。原因となる病気としては、腎性、内分泌性、血管性、薬物によるものなどがあげられます。2つ目は「本態性高血圧」と言い、血圧を上げるいくつかの要因が複雑にからみあって発症するタイプです。日本人では「二次性高血圧」と比較して圧倒的に患者数が多く、その割合は全体の9割ほどと言われています。このタイプの血圧を上昇させる要因には、大きく分けて遺伝的素因と環境因子に分けることができます。遺伝的素因は高血圧になりやすい遺伝的要素があるということで、生活習慣に注意することによって発症しないケースもあります。親族に高血圧症がいないか確認し、生活習慣に気をつけることは高血圧の予防につながります。環境因子は塩分のとりすぎ、肥満、飲酒、運動不足、精神的ストレス、喫煙などが血圧を上げる要因となります。

高血圧症の治療

医師に高血圧症と診断された場合は、治療の前にまずは高血圧症の原因(本態性高血圧症か二次性高血圧症か)、重症度、合併症があるかないかを詳しく調べた上で、医師に今後の治療方針を決めてもらいましょう。また、今は手軽で精度の高い血圧計が安価で購入出来ますので、ぜひ自分で毎日血圧を測定する習慣をつけましょう。
治療には「非薬物療法」と「薬物療法」とがあり、重症度に応じて「非薬物療法」で治療可能か、併用して行うのか医師と相談しながら進めましょう。
「非薬物療法」は生活療法・運動療法・食事療法の3本柱です。この3本柱のバランスがとれていることが治療効果につながります。それぞれの療法で気をつけるポイントを下記にまとめます。

生活療法

精神的ストレス(趣味や社会活動などの気分転換になる時間を作りましょう)、睡眠(自分にとって最適な睡眠時間を確保しましょう)、入浴(血管を広げ、血行を良くすることで血圧を下げる効果がります。ただし、急激な温度差には注意しましょう)

運動療法

急に激しい運動を始めるのではなく、全身を動かし大量の酸素を取り込む有酸素運動を行いましょう。まずは脈拍が100〜120程度のウォーキング(早足の散歩)を1日30分以上を目標に行います。連続して行うことが難しい場合は、10分以上の運動を数回に分けて行うか、1回1時間の運動を1日おきに行うと良いでしょう。継続的に無理なく続けていくことが効果的です。

食事療法

食塩制限とカロリー制限が中心となります。まず、食塩を取り過ぎると塩分を薄めようとして水分も取り過ぎてしまい、その結果、血液量と心拍数が増えて末梢血管への圧力が強くなり、血圧が上昇します。また、食塩に含まれているナトリウムは血管を収縮する働きがあるため、血圧を上昇させます。食塩の1日摂取量は6mg未満を目標にしましょう。香辛料や薬味を使用するなどの工夫により、食塩制限を無理なく継続的に行うことができます。
また、血圧を下げることにおいて肥満を改善することは重要です。穀類・菓子及び嗜好飲料などの糖分や、揚げ物・調理油などの油脂のとりすぎによる、エネルギーの過剰摂取に注意しましょう。 しかし、過度な食事制限はせずに栄養バランスを考えて3色規則正しく食べることを心がけましょう。

お酒やたばこについて

アルコールは少量なら血圧を下げますが、大量に摂取すると血圧が上がり心臓に負担がかかります。1日に日本酒で1合、ビールなら中ビン1本が適量といわれています。
また、喫煙は血管の収縮や血管壁を傷つけ、動脈硬化を促進させる可能性があるため、たばこは控えることを強くお勧めします。

薬物療法

「薬物療法」 では降圧薬が使用されます。服用を始めるタイミングは、糖尿病や臓器障害、心血管病の有無によって総合的に判断されます。最初は作用が弱めな降圧薬から始め、全身の状態をみながら薬の種類や量を調整し、数ヶ月かけて少しずつ確実に血圧を下げていきます。「薬を服用しているのに血圧が下がらない」「血圧が下がったから服用をやめる」など自己判断での薬の服用をやめることは、決してしないでください。血圧のコントロールが乱れて血圧が急に高くなることもあり、大変危険です。薬の飲み方は、必ず主治医とよく相談しその指示に従ってください。また、血圧が安定して薬を飲まずに血圧をコントロール出来るようになったとしても、血圧を継続的に計測し、合併症の予防や管理を行う為に定期的に通院をしましょう。