脳卒中について

脳卒中とは

脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳に深刻なダメージが起こる病気です。何の前触れもなく症状が突然起きる病気で、意識障害や手足の麻痺、ろれつが回らなくなったりします。発症には高血圧や脂質異常症、糖尿病、不整脈が関係していると言われています。脳卒中は日本人の死亡原因第3位であり、死亡者数は横ばいで増加傾向にあります。

脳卒中の症状

よく見られる症状を下記にまとめました。自分自身だけではなく、周囲の人にもこのような症状が見られた場合は救急車を呼ぶなど適切な対応をしましょう。自分では初期症状に気がつかないことが多いという事を理解しておきましょう。

  • 片方の手足や顔半分が麻痺する、痺れる
  • 急に手足の力が入らなくなり箸やペンなどを落としてしまう
  • 力はあるのにうまく歩けない
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出てこない
  • 片目だけ見えなくなる
  • 物が二重に見える
  • 急にめまいやふらつきがある。
  • 頭痛や吐き気がある。
  • 意識を失う(重傷の場合)
  • ハンマーで殴られたような激しい頭痛がする。(くも膜下出血の場合)。

また、「一過性脳虚血発作(TIA ティーアイエー)」という上記の症状が一時的にあらわれる脳梗塞の前兆があります。これらの前兆があった人の2〜3割は、近い将来に脳梗塞を発症すると考えられています。少しでも当てはまる方は、必ず医師の診断を受けましょう。

脳卒中の原因

脳卒中の主な原因は、「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの生活習慣病です。
まず、「高血圧症」は脳の血管が破れる・詰まる両方の現象に関連があり、血圧が高ければ高い程、脳卒中の発症リスクが高まることが分かってきています。「高血圧症」の方は、治療目標値まで下げて維持する治療を止めないことが大切です。
次に脂質異常症や糖尿病においても、血管壁でのコレステロールの蓄積や高血糖状態により全身血管がもろくなったりと動脈硬化の進行につながり、脳梗塞の発症リスクは高まります。「脂質異常症」の方は、コレステロール値の厳格なコントロールを欠かさず、自信の目標値以下までしっかり下げましょう。「糖尿病」の方も降圧目標値になるまで継続的に通院し、医師の指導のもとでしっかり薬物治療を行いましょう。

脳卒中の治療

治療方法は、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」で内容が異なりますので、それぞれご紹介します。

脳梗塞の場合

血液の流れが妨げられている部分を血流再会・改善を目的に主に薬物を用いた内科的な治療を行います。
急性期の治療の場合は、脳梗塞後に発生するむくみを取る「抗脳浮腫薬」、発症3時間以内であれば血栓を溶解することが出来る「血栓溶解剤」、脳の血流が滞ることで起きる神経細胞のダメージを軽減する「脳保護薬」を点滴を用いて投与します。
急性期から慢性期の場合は、血小板が集まることで起きる血栓再発を防ぐ「抗血小板」、塞栓が起きないように血液自体が固まることを防ぐ「抗凝固剤」を飲み薬として摂取します。

脳出血の場合

出血量・出血が起きている場所・意識の有無などで薬物治療か手術かを選択します。
薬物治療では血圧を下げて血腫が大きくなるのを防ぐ「降圧薬」、脳のむくみを取る「抗脳浮腫薬」を使用します。出血した血液はこれらの薬では取り除くことは出来ませんが、いずれ大部分は自然と吸収されます。手術を行う場合は、開頭か頭蓋骨に小さな穴を開けて、血腫を取り除きます。

くも膜下出血の場合

くも膜下出血の場合、まずは破裂した動脈瘤が再び破裂して大出血を起こすことを防ぐ為に、手術や血管内治療が行われます。ここでは2つの術式をご紹介しますが、動脈瘤の部位や大きさ、患者さんの状態により手法は異なります。
1つ目は「クリッピング」手術です。動脈瘤の中に血液が流れ込まないように、開頭して動脈瘤の根元部分を専用クリップで挟みます。この手術により動脈瘤はやがてはなくなります。
2つ目は「動脈瘤塞栓術(コイル)」です。この手術は開頭せずに行えるところで、血管の内側から治療を行います。動脈瘤の中に人工的に血栓を作り、破れないようにする為にカテーテルを使用します。カテーテルを脚の付け根の血管などから動脈瘤に向けて挿入し、金属製コイルを埋め込みます。